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コロナで高校生の就活難航　求人2割減、離職高まる懸念

コロナ禍で高校生の就職活動が厳しくなっている。休校で準備期間が短くなったことに加え、求人数は前年から2割減。企業訪問後に採用中止になったケースも出ている。人気職種が軒並み減っており、進路担当の教員からは「離職率が高くなりかねない」という懸念の声が上がる。

　「これじゃ志望理由が分からないぞ」。今月中旬の夕方、県立船橋北高校（米沢努校長）の図書室では、就職希望の生徒向けに説明会が開かれていた。

　事前に提出された履歴書を、進路指導の教諭が生徒一人ひとりにアドバイスしていく。指導した杉浦健爾教諭は「例年より準備が遅れていて、就活についてまだ理解していない生徒が多い。やはり新学年のスタートが2カ月遅れになった影響は大きい」と悩む。

　遅れの原因は新型コロナウイルス感染拡大による休校だ。県内の県立高の場合、1学期が始まったのは6月1日。当初は分散登校などの制限があり、全日授業が再開したのは半月後だ。

　同高は毎年、就職希望の生徒は新3年生になると同時に、前年に企業がハローワークに提出した求人票を元に志望先を絞り、面接を含めた応対練習などを重ねる。7月1日公開の求人票で最終的に夏休みの企業訪問先を決め、選考解禁となる9月16日に備える。

　今年は約50人が就職希望だ。休校中も学校のホームページなどで進路指導はしてきたが、「学習指導と違い、個々の意欲を高めるなどの面では限界があった」という。

　高校生の就職の特徴は「1人1社制」の慣例だ。1950年代から続くとされ、高校側が公平に就職をあっせんして内定率を高めるためや、就活による学業への影響を最小限にとどめるための措置とされる。

　国は6月、コロナ禍により高校側の準備が遅れていることから、「生徒の希望・適性にあった就職を実現し、ミスマッチによる早期離職を防止する」として、選考解禁を1カ月後ろ倒しすることを決めた。

　だが、生徒たちの不安は根強い。県内の鉄道会社を志望する男子生徒（18）は「先輩からいい職場と聞いていたので、前から決めていた。ただ2次試験まであるので、内定が出るとしても11月になる。もし落ちたら、一からやり直しとなり、決まるのは『年を越してしまうかも』と言われている」と顔を曇らす。

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　コロナ禍の影響は就活準備の遅れだけではない。

　「志願書類を出す前に断られるなんて思わなかった。電話で聞いた時は悔しくて涙が止まらなかった」。成田空港の保安検査会社を志望していた船橋北高の女子生徒（18）は8月中旬、会社側から採用中止の知らせを受けた。すでに企業訪問も行った後だった。

　女子生徒は空港業界で働く夢とともに、「早く自立したい」という希望から寮がある会社を志望していた。採用中止の連絡後、夏休みを潰して求人票を調べたが、希望職種で寮付きの企業はなかった。寮は断念し、業種も販売業に変えざるを得なかった。

　この会社の担当者は朝日新聞の取材に「海外便の激減で、会社の営業収入は10分の1になった。（求人を出した）7月の段階ではここまで悪化が長引くとは予想できなかった。志願者には本当に申し訳ない」（総務部）と話す。

　千葉労働局によると、7月末現在の高校新卒者の求人状況は、前年までの「売り手市場」から一転、前年比22・7%減だ。特に深刻なのは高校生に人気の職種で、ホテルやレストランスタッフなどの「宿泊業・飲食サービス業」は同50・6%の激減。地域別では、空港関連産業が多い成田は同39・7%減だ。

　百貨店の化粧品販売員を志望する同高の女子生徒（17）も「夏休みになってようやく届いた求人票を見て焦った」と話す。例年8人採用が今年度は2人になっていた。説明会には9人が来ているという。「フラダンスを13年間続けているなど粘り強さをアピールするつもりですが、受かる気がしない」と嘆く。

　行政側も「求人が減っているのは把握しており、現在各高校に状況を聞き取りしている」（県教育委員会）、「7月から企業側に採用の働きかけを呼び掛けている」（千葉労働局）などと影響を懸念している。

　同高で進路指導主事を務める條（じょう）冬樹教諭は「以前に比べれば求人倍率はまだ高いとはいえ、高卒就職者の3年以内離職率は約4割ある。希望の職種につけなかった子どもたちが離職してしまう可能性は高いだけに心配だ」と話す