カリカリが食べづらくて不味いんだけど、どうすればええの？缶詰が欲しいんだ

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a0a6732161fc896725708c6612877e1105653a0

幕末武士が初めて食べた豪華西洋料理を酷評！　万延元年遣米使節団員の正直な感想

ホテルの豪華料理
この幕末武士の西洋料理体験については、すでに前坊洋の論稿があるので〔前坊:二〇〇〇〕、それに拠りながら、この問題を考えてみよう。先に「一定の準備期間」としたが、それは太平洋上の航路でのことである。

このときまでは、福沢諭吉も乗り込んでいた咸臨丸が随走しており、補給態勢が比較的整っていたため、洋上での食事は基本的に飯と魚で、樽で持ち込んだ味噌と醬油も、アメリカ上陸まではふんだんに準備されていた。

この使節団の正使は外国奉行・新見豊前の守正興で、その従者に柳川当清や玉虫左太夫などがおり、それぞれ『航海日記』『航米日録』といった日記を残している。

アメリカ上陸後にサンフランシスコのインターナショナルホテルで、一行は正餐を受けたが、料理はパンにスープのほか、サーモンソティのソース掛け・ビーフの塩煮・ポーク(若しくはチキン)の煮物、さらにはカステラのデザートなどが並ぶ、という豪華なものであった。

味付けの問題
しかし、これに対する柳川の感想は、「大馳走と云共、我朝人の為にハ塩気もなく、油の香におひ有て食する事あたはず」というもので、空腹に耐えられずに、いずれも少しだけ食べたとしている。もちろん味覚や嗜好に個人差があるのは当然であるが、「外邦ニ来リ飲食ニ苦ムハ是井蛙ノ見」と記した玉虫も、やはり「膏臭」と「塩ノミ」ゆえに「味美ナラズ」と評している。

いわゆるバタ臭さと、味噌・醬油を伴わない塩だけの味付けに、彼らは閉口したようである。別のホテルでは、料理に添えられた米飯に一見喜んだものの、実はバターライスで「ボウトル(=バター)の香ひ」に食しかねるというありさまだった。

咸臨丸などに積み込んだ味噌と醬油も、アメリカ上陸時には心細い状態となり、それからは西洋料理の味付けに耐えねばならなかった。アメリカ側の新聞などは、彼らの饗応が「日本人に大変よろこばれた」と報じたというが、獣肉・油の多用・バターなどで、ひとつも口に合うものがなく、食べ物の大きな相違が、彼らをほとほと困らせたようである。

帰国後の楽しみ
それゆえ帰国の途も東南アジアに入り、バタビアのインデスホテルで、長崎渡りの醬油で煮炊きした料理に出会ったときには、この料理を誰もが喜んで食し、身体が太るような気がしたという。

彼らの帰国後の楽しみは、「味噌汁と香の物」で腹いっぱい飯を食うことであった。九ヵ月におよぶ世界一周での西洋食体験は、長い間に身に付いた食習慣が、全く異なる食文化体系に接した場合に、どのような反応が惹き起こされるか、という一大実験でもあった。