そこら辺に生えてる雑草食べると食費浮いて節約になるぞ

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「ただで土あげる」信じたら10mの山　撤去に7千万円

「ただで土を入れて水田にしてあげる」。そんな言葉を信じたら1年後には高さ10メートルの建設残土の山が。県も市も警察も頼りにならず、撤去を求める裁判に勝訴したものの変わらない。自腹で撤去したら最低7766万円かかるという。全国各地で建設残土を巡るトラブルが頻発している。
7月、長雨が続いた日は一段と不安が募ったという。愛知県弥富市の会社員の女性（58）は、「崩れて周りに流れ出したら大変なことに……」と漏らす。
名古屋港にほど近い弥富市の南部、住宅や倉庫が点在する田園地帯に高さ10メートルのこんもりとした山がある。クズなどの雑草が生い茂る。広さは5100平方メートルで積み上がった建設残土の推定量は2万立方メートル以上。女性の所有地だが、かつては金魚の養殖池だった。
2017年5月、女性宅をジャケットを羽織った男が訪れた。
「土で埋めて農地にしませんか」
弥富名産、金魚の養殖を手がけていた父親が亡くなり、水を抜いた状態にしていた。米は買っていたためいずれは田んぼに変えて稲作をしようと思っていた矢先だった。
差し出した名刺には「土地・建物・企画開発」とある。男は続けた。
「リニア（中央新幹線）建設で出る残土」「きれいな山の中の土」。「ただで入れてあげる」と付け加えた。
男は、池を農地へ変えるため必要な市へ届け出も代行するという。女性と会社員の夫（62）は、男の言葉を信じて任せることに決めた。
8月、市への手続きが済んだという連絡が入る。一枚の書面を示し、署名を求められた。「建設発生土受入承諾書」という表題しか記されていなかったが従った。
土を運び入れる作業をするとして現れたのは三重県桑名市に「本事業所」を置いているという建設業者（75）だった。後に、男に土を置く場所を探すよう依頼していたことを明かす。
池の深さは数十センチで、土は隣接する道路下30センチにまで入れた段階で作業を打ち切る約束だった。
9月下旬、ダンプカーが現れ、土の投棄が始まった。連日続き、10月初めには予定の高さにまで達したが止まらない。同月23日、夫婦は業者の男に「なんでこんなに入れるの」と搬入をやめるよう迫ったが、「これは柔らかい土なんで」と返す。
翌日もまたダンプカーが現れる。重機でならしては土が運び込まれ、だんだん高くなっていく。夫婦は毎日のように電話で文句を言うが作業をやめない。
「一時的に残土を置いてるだけや」「来年1月になったら土はどかす」「2月になったら」……。口調は高圧的になっていく。ダンプカーの出入り口を自家用車でふさいだところ、「邪魔するともう土はここから出さんからな」と怒鳴った。
警察に相談し、パトカーを呼んだ。県にも市にも相談した。市は、「水田にするという届け出内容と違っていた」（農政課）としてこの業者を呼んで何度も指導したが聞き入れられなかった。
夫婦ら家族は出入りするダンプカーをチェックしていた。車体には「三重」「岐阜」「尾張」と書かれ、各地から集まってきていたことがわかった。土の中にはコンクリートの塊も見えた。
心労から夫婦げんかも絶えず、近所から「早くどかして」と苦情も届いた。
搬入が始まって9カ月たった18年6月初め、ダンプカーは来なくなり、間もなく重機も消えた。
「だまされた。逃げ切るつもりだ」。夫婦で桑名市の業者の男の家まで行ったが、「また片付ける」「移動させる」と言うばかり。
手を尽くして最後にすがったのは裁判。19年5月、津地裁四日市支部にこの業者を相手取り、残土の撤去などを求めて提訴した。
様々なことがわかった。
この業者は他にも岐阜、三重県内でも所有者の意向を無視して建設残土を投棄、放置する問題を数件起こしていた。
さらに残土は様々な建設現場から下請け、孫請け業者を通じて持ち込まれていた。うち少なくとも1350立方メートルは大手ゼネコン（東京）が手がけた弥富市の新庁舎（今年5月完成）の建設に伴う残土だった。「1次下請け業者以下を挟んで処理されており、その土地への搬入に関知していない」（同社広報）と答える。
今年5月、津地裁四日市支部は残土の撤去と慰謝料など計110万円の支払いを業者に命じる判決を下した。しかし山はそのままだ。
桑名市北部の住宅地に業者の男が暮らす木造平屋建ての借家がある。男は判決について、「きちんとせなあかんということは自覚しとる。（残土を移す場所が）見つかったら少しでも撤去させる」と繰り返した。見通しについては「今、探しとる最中や」と話した。