【事件簿】さよなら「秘密基地」。大分市の路地裏「フンドーキンマンション」解体

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斬新なデザインで知られる大分市中央町の「フンドーキンマンション」の解体が始まった。
築５３年。秘密基地のようなたたずまいが建築・美術関係者の注目を集め、路地裏のシンボル的存在だった。
改修・保存を望む声もあったが、老朽化や耐震性不足で取り壊しが決まった。当面は駐車場になる。
所有する不動産会社は「いつかここで当時の思いを継承する建物を再生させたい」と話している。
　
マンションはガレリア竹町商店街の裏通りにある。東京の建築家、生田勉さん（故人）と天野彰さんが設計を手掛け、
１９６７年に完成した。鉄筋コンクリート６階（延べ約１４００平方メートル）。１８戸の賃貸住宅とフンドーキン醤油（しょうゆ）
（臼杵市）の事務所として２０１２年まで利用していた。
　
ハンマーでたたいて表面に凸凹を出した外壁、空中に大きく張り出したバルコニーが異彩を放った。
内部は一つの住宅が２層に分かれたメゾネット形式で当時の最先端を取り入れ、鉄の窓枠や換気扇といった細部にも職人技が光った。
　
年月を重ねて味わいが増し、会員制交流サイト（ＳＮＳ）などで話題を呼んだ。１３年にはマンションを舞台にした
アートイベントが３カ月にわたって開かれ、多くの人でにぎわった。
　
期間中は大分市府内町の建築家、光浦高史さん（４３）も自身の設計事務所をマンション内に構えた。
「空間を立体的に捉えた夢のある造り。人が集い、コミュニティーが生まれる可能性を持った場所だった」と話す。
　
土地と建物は今年８月、同市の不動産会社「新大分土地」がフンドーキン関係者から引き継いだ。
　
阿南勝啓社長（６０）は十数年前からマンションに注目してきた。「東京・表参道にあった同潤会アパートのようにおしゃれでモダン。
どんな人がどんな暮らしをしていたのだろうとイメージが膨らんだ」。１０年ほど前にリノベーションを提案したが、
構造の図面などが残っておらず、調査や再設計に時間と手間がかかるため難しかったという。
　
それでもこの場所にこだわり、買い取ることにした。９月末から解体に着手。来年２月までかけて更地に戻し、
当面は駐車場として活用する。「建物は消えてしまうが、ここで新たな未来をつくりたい。当時のように、
街なかで暮らしたいと思えるような賃貸マンションを建てたい」と構想を語った。

解体が始まったフンドーキンマンション（１２日）。現在はシートで覆われている＝大分市中央町
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